ランのお話し


このページはランのことがあまりよくわからないという方にランに少しでも興味を持っていただけるよう、ランの基礎知識(そんなに大それたものでもありませんが)をお話しようというコーナーです。
詳しくお話しすると学術用語が出てきて、さらにその学術用語を解説すると大変わかりにくくなってしまいますので(説明のしかたが下手なもので…。より詳しく知りたい方は「お花の本箱」のページで紹介いたしております参考文献をご覧になられるか、メールにてお問い合わせください。わかる範囲でがんばってお答えいたします。)、ここではおおよそ「ランはこんなものだ」、「こんな面白い植物なんだ!」とご理解ご興味をもっていただけるようなお話をしたい?と思います。文字だらけですが読んでやってください(少し写真もあります)。


「ラン科植物とはなんじゃろか?」

「ランて何?」「ランてどんなもの?」「どんなものをランて言うの?」 趣味でラン栽培をしているとこのような質問を時々受けることがあります。
そこでがんばって「ランはこんなものですよ!」とお答えするのですが、私の説明が下手なためか、あまりご理解いただいていないようで、余計に混乱させているようにも思います。本当に説明って難しいですね!

ところで私は「ランにはまってしまった病」に罹っているので、「ラン」という言葉に敏感になっています。例えば街中を車で走っていても「レストラン」と書かれた看板があったらすぐ目にとまってしまいますし、はてまたテレビや新聞などを見て「モンブラン」「ライフプラン」「伊藤」という言葉がでてくると気になってしまいます。

このような言葉とお花の「ラン」とは違うものと誰でもわかることですが、ややこしいことに植物の中にはランではないのに「○○○ラン」と名のつくものがけっこう多くあり混乱する原因の一つにもなっています。

例えば「スズラン」「オリヅルラン」「ハラン」「マツバラン」「ヒモラン」「シシンラン」「ケイビラン」「ヤブラン」「タヌキラン」「クンシラン」「リュウゼツラン」「キジョラン」などなどランとつく名前の植物はとても沢山あります。
では、どこが違うからランではないのでしょうか?


「ランにはこんな特徴があります」

ラン科植物は単子葉植物に分類される植物の一群です。ですから基本的には同じ単子葉植物の仲間のユリやイネ、アヤメような植物と似ています。(単子葉植物とは、種子から発芽したときの子葉の数が1枚で、葉脈が網目にならず平行脈という特徴を持つ植物[例外もあります]のグループ。ユリやショウガ、アヤメ、イネ、ヤシ、サトイモなどの仲間も同じ単子葉植物です。)
ランは非常に種類が多く形態的にも変化に富んでいるのですが、いくつかの共通した特徴により他の単子葉植物の仲間と区別されています。
(注:すでに分かりにくい説明になっています。ここまで読んでいただいた方!ありがとうございます!もうしばらくお付き合いください。)
その単子葉植物の中でもランはユリ科植物と比較的近い仲間になりますのでユリ科植物との違いが分かっていただければ「これがランだ!」とご理解いただけるはず!?
(ちょっと強引でしょうか?)


ということでユリ科植物との違いをあげますと、(一部例外もあります)
●ランの花は左右対称!
カトレヤの花を思い浮かべてください。ランの花には目立つ大きなフリフリの花びら(唇弁またはリップ、舌とも呼ばれる)が一枚ついていて、お花に上下があって左右対称になっているのがおわかりでしょうか?
下の写真を見てやってください。上段がラン科植物(モデルはジエビネ)の花で、下段がユリ科植物(モデルはチゴユリ
)の花です。
ラン科植物のお花に縦線を中央に一本引いたときその左右が鏡で写した様に対称になっている、つまり左右対称になっています。
一方ユリ科植物の花の場合、左右が対称になるように線を引くとしたら沢山引くことができます(放射相称)。

違いがわかっていただけたでしょうか?
※ユリ科は細分されたので、現在チゴユリはイヌサフラン科になっています。
←ラン科植物
 (ジエビネ)
  の花

 白く目立つ
 花びらが
 唇弁
←花に縦線を引い
  てみると、
  縦線の左右が
  対称(鏡で写
  したよう)に
  なっている


←ユリ科植物
 (チゴユリ

  の花



※ユリ科は細分されたので、現在チゴユリはイヌサフラン科になっています。
←対称になるよう
  に線を引くと
  複数の線が引
  ける

  (写真と線がずれて
   いてすみません)

●ランの花は雄しべと雌しべが一体になっている!(あるいは一体になりかけている)
普通「お花といえば雄しべと雌しべがあって…」というのが当たり前で小学校でも習ったことですが、ランのお花は少し違っています。
ほとんどの種類で雄しべと雌しべが合体して一本の柱となり「ずい柱」という器官を作っています。
「ずい柱」は効率よく虫に花粉を運んでもらい受粉してらえるように進化した器官と考えられています。
←シュンランのずい柱

 葯帽というふたの中に
 花粉が入っています。


 雌しべの先端にあたる
 ところはずい柱の裏側
 の葯帽より少し奥の
 くぼんだ部分にあります

●ランの花粉は集合して塊になっている!
花粉というものは字のとおり「粉(こな)」が普通ですが、ランの場合花粉が集合して塊(「花粉塊」と呼ばれる)になっています。
種類によっては「花粉塊」は硬くプラスチック片のように思えるようなものもあります。
「花粉塊」は一度に沢山の花粉を虫に運んでもらえるよう進化したものと考えられています。
←シュンランの花粉塊

 シュンランの仲間の
 場合、葯帽を取ると
 あります。

 黄色く硬くプラスチック
 片のよう。

●ランの種子はほこりのように小さい!
ランの種子はとても小さく大きなものでも数mm、小さなものでは1mmにも満たないものもあります。軽量化し風に乗せて遠くへ種子を飛ばすため進化したとも、また限られた材料で沢山の種子を作るために小さく進化したとも考えられています。カトレヤでは一つの果実の中に数十万粒の種子が入っているとも言われています。
ただ、あまりにも小さく軽くしたため一般の植物の種子に見られる胚乳(発芽のために種子に蓄えたエネルギー源)がないため自力で発芽ができず、菌(ラン菌と呼ばれる)の助け(栄養をもらっている)を借りなければ発芽・初期の生長ができなくなっています。
←チケイランの種子

  ホコリのように見える
  粉の一つ一つが種子。

  大きさは1mmにも
  満たない。


  チケイランについてはこちらをご覧ください⇒
豆知識:ランの本などを見ると時々出てくる「無菌播種(むきんはしゅ)」とは、ラン菌の助けを借りることなくランの種子を発芽させる方法のことで、菌の無い環境下で培地と呼ばれる栄養と水がたっぷりあるところに種子を播いて(直接栄養を種子に与えています)適切な光・温度管理をして発芽させています。

●他にもいろいろ違いがあったり例外があったりもしますがおおよそこれらが分かれば「ランである」と判断することができます。


(ここまで読んでいただいた方はすごい!もう少しご辛抱を!リタイヤの場合はこちらへ→戻る


ランはとても沢山の種類があります」

ランは極地や砂漠などの乾燥地をのぞいた世界中に広く分布し、それぞれの環境に適応するため、さまざまな姿に変化しているので、非常に沢山の種類が存在しています。自然に生えている種(しゅ)だけで約2万から2万5千種あるともいわれています。
植物全体の種数(種子植物:花を咲かせる植物)が約23万種といわれていますから、約1割をランが占めているということになります。
ちなみに日本には約250種が自生しています。


「ランはいろいろなところに生えています」

植物は地面に生えているのが当たり前ですが、ランの場合むき出しの岩肌にくっついていたり、樹木にくっついていたりして生えている種が沢山あります着生ランと呼びます)
もちろん、地面に生えている種も沢山あり
地生ランと呼びます)、うっそうとした樹林下の暗いところから直射日光がサンサンと照る明るいところ、暑いところから寒いところ、海岸近くから高山まで、さらには湿地にも生えています。
本当にいろいろな環境に生えているので、その環境に適応するために様々な姿形に進化し同じ仲間とは思えないほど変化に富んでいます。

いろいろな環境に生えているので、「温室がないとランは育たない!」と思っておられた方は安心してください。温室がなくても育てられるランは沢山ありますよ!
 ←フウランの自生状態です。
   木の股の部分にある緑の細い葉が
   フウランです。
   良く見ると白い根が木の幹に張り付いて
   いるのが見えます。


   三重県にて撮影。

   フウランについてはこちらをご覧ください⇒
 ←ムギランの自生状態です。
   写真中央にある木の幹にくっついている
   緑色の丸みのある葉をつけたのが
   ムギランです。
   環境の良いところでは、木の幹を覆うほど
   繁殖していることが良くあります。

   
奈良県にて撮影。

   ムギランについてはこちらをご覧ください⇒
 ←木についたコケの中にウチョウランが生えています。
   ウチョウランは通常、岩場のコケや他の植物
   の根の中に生えていますが、たまに木についた
   コケの中にも生えます。


   奈良県にて撮影。
 ←セッコクの自生状態です。
   赤茶色の茎を林立させているのがセッコクです。
   ほとんど何もない岩壁にくっついて生えています。
   
   何もつかまるところがなく「落ちたらおしまい」と
   いうような場所で決死の撮影!?


   三重県にて撮影。

   セッコクについてはこちらをご覧ください⇒


「種子は菌の助けを借りて発芽します」

ランは普通の植物のように種子を播いて小苗を作ることが非常に難しい植物です。園芸店の種子売り場でもランの種子は売っていないですよね?
では、どうして種子を播いてふやすことが難しいのでしょうか?
それは、でも述べていますが、ランの種子はとても小さく一般の植物のように胚乳
(発芽のために種子に蓄えたエネルギー源)がないので、自力で発芽することができなくなっているからです。(一部例外があります)
そのため、自然界では菌に栄養をもらい発芽しています。
この菌はラン菌(共生菌)と呼ばれていますが、共生していると言うよりもランが菌を一方的に利用しているようにも見えます。
では自然界ではランはどのようにして発芽しているのかというと、ランの小さな種子は風に運ばれてたまたま環境の良いところに落ちたとします。ランの種子はそこで水分を吸ってふくらみます。そこへランの種子を食べようとラン菌が種子の中に菌糸を伸ばし侵入しますが、ランの種子は逆に侵入した菌を消化吸収し栄養源としてしまいます。
こうして得た栄養により種子は発芽し生長していきます。
(ただし、場合によっては侵入した菌に勝てず種子を食べられてしまうこともあります。)
その後、生長し成株になっても根の中に菌を住まわせていて、光合成により得た糖分を菌に与え、その代わりに他の栄養を菌からもらっています。
(このような関係からラン菌は共生菌とも呼ばれています。多くの場合、完全に菌に依存しているわけではないようです。)


「変わった生態のランがあります」

●菌に頼って生きています! 「腐生ラン」Lecanorchis属、Galeola属、Neottia属、Cymbidium属の一部など他多数)
葉緑素を持たず菌の助けを借りて(菌に寄生しているような状態で)生活しているランがあり、このようなランを「腐生ラン」と呼びます。光合成ができないので自力でエネルギーを作ることができません。
でも述べたとおり、他の普通のランも種子からの発芽の際には菌の助けを借りて成長していますが、その後に緑葉を広げると自力で生活できるようになるので多くの場合、菌にはほとんど頼らなくても生活ができるようになります。
しかし「腐生ラン」は発芽初期の状態
(菌に頼っている)をそのまま続け、大きくなっても光合成をせず菌から栄養をもらい続けて生活をしています。
日本にもオニノヤガラ、ツチアケビ、マヤラン、ムヨウランなど沢山の種が生えています。

  ←アキザキヤツシロラン
    葉緑素を持たない腐生ランです。
    一見キノコの様な雰囲気。

   アキザキヤツシロランについてはこちらをご覧ください⇒    

●根っこだけで光合成? 「無葉ラン」Taeniophyllum属、Dendrophylax属、Microcoelia属、Camphylocentrum属の一部など多数)
樹上に生える着生ランの中でも極めつけなのが、葉を無くし、代わりに剥き出しになった根で光合成をするという変わったランがあります。乾燥環境に適応するために進化したとも考えられています。葉がなく緑っぽい色をした灰色の根だけが放射状に広がり木にくっついている様はちょっと異様で面白いです。これらの仲間は結構沢山あり「無葉ラン(leafless orchid)」と呼ばれています。日本にも「クモラン」が自生しています。(注:日本には「ムヨウラン」という名前の種がありますが、これは腐生ランでここで言う「無葉ラン」とは異なります)
  ←クモラン
    杉の小枝に3株ついています。
    緑灰色の根が放射状に広がり
    名前のごとくクモのようです。
    黄緑色の葉のように見えるのは
    果実です。

   クモランについてはこちらをご覧ください⇒

●花粉塊を虫に発射! 「カタセタム」Catasetum属)
100種ほどが中南米に分布している着生ランです。この仲間はランでは珍しく雄花と雌花を別に咲かせます(ほとんどのランは両性花です)。
このランの変わっているところは雄花だけなのですが、まるでカラクリ仕掛けのように花粉塊を虫にくっつけるという技を持っています。
虫が花にとまり、ずい柱にある触覚状の突起に触れると機械仕掛けのように花粉塊を発射して虫に貼りつけます。発射する勢いはすごく数十センチメートルから1メートルも飛ばすことがあるそうです。


●落とし穴に水責め! 「バケットオーキッド」
Coryanthes属)
「バケットオーキッド」は中南米に分布する着生ランで20から30種ほどあります。バケツラン、ヘルメットランとも呼ばれます。このランの花は巧妙な仕掛けで蜂に花粉塊を運んでもらっています。
この花の受粉に利用されている蜂はシタバチの仲間で、ちょっと変わった生態を持っています。そのオス蜂は後ろ足の太ももの部分に花の香りを溜めるスポンジ状の隙間があり、そこに集めた花の香り成分からメス蜂を誘引する性フェロモンを合成します。そのためにオス蜂は花の香りを集めるのに励んでいます。
その蜂の生態を利用し、非常に手の込んだ方法で受粉をさせるのがバケットオーキッドです。
このランの花は変わった形をしており、大きな袋状(バケツ状)になった花びら(唇弁)をもちその中に常に液体を溜めています。その袋状の花びらの付け根付近からオス蜂の好む香りをだし誘惑します。その香りに誘われたオス蜂は花にとまり、せっせとその香りを集めていますが袋状の花びらの付け根や縁は滑りやすく、また興奮状態の蜂が集まった花の上は混乱しているのでつい足を滑らせ、その袋状の花びらの中へ落ちてしまいます。花びらの中は液体が溜まっているので落ちた蜂はおぼれないようあわてて脱出しようとしますが羽がぬれて飛ぶこともできず、さらには壁面は滑りやすいのでよじ登ることもできません。ただし、一箇所だけ足場があって這い上がることができるところがありその足場の先にはトンネル状になった出口が続いています。蜂はその狭いトンネルを通って外に出ることができますが、その途中には柱頭があり、さらに出口の最後には花粉塊を背中にしっかりとくっつけられてしまいます。そうした蜂はまた別の花へ行き同じ行動をしてランの受粉の手助けをさせられてしまうのです。


●色気で騙す? 「オフリス」
Ophrys属)
「オフリス」はヨーロッパとその周辺に約50種ほど生えています。このランは花の形がその地域の蜂にそっくりの大きさ・形をしています。なぜ蜂の形をしているのかというと、実はメスの蜂に扮装しオス蜂を誘惑して受粉をさせるためなのです。しかも花からはメス蜂が発散するフェロモンとそっくりの化学物質を出しているので、オス蜂はすっかり騙されてしまいます。ですからオス蜂はこのランの花を見つけると交尾をしようと花にしがみつきます。そうこうしている内に花粉塊を体にくっつけられてしまいます。オス蜂はまた別の花へ行き同じことをして先ほどの花粉塊を柱頭に擦り付けてしまうという、なんだかとても切ない仕打ちにあいます。
ランて本当にすごいですね!


●色気とカラクリで確実に! 「ハンマーオーキッド」
Drakaea属)
「ハンマーオーキッド」はまれにテレビでも紹介されることがある興味深いランです。オーストラリアに6種ほど生えています。上のオフリスと同様で花をメスの蜂に似せているのですが、この花にはさらにカラクリがあります。そのカラクリは騙される蜂の生態にあわせた巧妙なものです。
この蜂のメスは羽が無く普段は地中に住んでいますが、繁殖の季節にだけ地上に出てきて近くの植物の茎によじ登りフェロモンを発散しオスを誘います。そこへオス蜂(オスには羽があります)が飛んできてメス蜂の背中に止まりメス蜂を抱えて飛んでゆき空中で交尾をします。
この蜂の行動に目をつけたのがハンマーオーキッドで、花びらの1枚(唇弁)をまるで羽の無いメス蜂のような色・大きさ・形・香りにして、まるでメス蜂が草の茎の先端に止まっているかのように擬態しオス蜂を誘います。そこへオス蜂がやってきてこの花びらを抱えて飛んでゆこうとしますが、当然花びらはくっついているので連れて行くことができません。さらにその花びらは蝶番(ちょうつがい)のような仕掛けになっていて抱えて飛び立とうとすればずい柱の方へ倒れ、蜂はひっくり返って背中を花粉塊や柱頭のあるところにぶつけてしまいます。こんなひどい目にあってもオス蜂はまた別の花を見つけると同じことを繰り返し、ランの受粉の手助けをさせられてしまいます。
なんか悲しくなってしまいますが、このような仕掛けを持ったランはオーストラリアにはドラゴンオーキッド(Caladenia属の一種)など沢山あります。


●地下でこっそり生活? 「リザンテラ」
Rhizanthella属)
普通の植物は光合成をするために光が当たる地上で葉を広げさらには茎を伸ばしたり花を咲かせたりしますが、このリザンテラは地上に姿を現さず一生を地中で過ごすとても変わったランです。
リザンテラは腐生ランの仲間なので、もちろん光合成の必要が無く地上に姿を現す必要がありませんが、それでも他の腐生ランとは大きく異なっています。それは他の腐生ランすべての花は地上で咲くので花の時期には目に付きますが、このリザンテラはなんと!「花を地中で咲かせる」ので見つけるのは非常に困難です。変な植物ですね〜。
リザンテラはオーストラリアに自生しています。Rhizanthella gardneriRhizanthella slateriの2種があります。


(こんなところまで読んでいただいてありがとうございます。あともう少しで終わりです。リタイヤの場合はこちらへ→戻る


「ランの無駄知識」

●ランの花は逆さを向いて咲いている!
ランの花を思い浮かべてください。ランの花には目立つ花びら(唇弁、リップまたは舌とも呼ばれる)が1枚あって花の下側についていますよね。ですから普通ランの花といえばこの唇弁が下向きになっているのが正常な位置と思われていますが、花をよく観察してみるとじつは花柄子房(花がついている軸で果実になる部分)が根元から180度ねじれていています。
蕾のときは唇弁は上側になっていて花茎に近いほうにありますが、花の生長とともに花柄子房がねじれて唇弁が下側に向いてきます。重力を感じて唇弁が下側にくるようにねじれるので、蕾のときから揺らしてやると唇弁の方向が一定せずに咲いてしまうようです。
一部の種には全くねじれず唇弁が上側を向いたままのものもあります。


●バニラアイスの黒い粒はランの種子!
あま〜いバニラの香りはアイスクリームやシュークリームなどのお菓子には欠かせない香りですよね!私の大好きな香りの一つで何か幸せな気分にしてくれます。
ところでこのバニラの香りはラン(バニラ・プラニフォリアVanilla planifolia)から作られています。少し高級なバニラアイスやカスタードクリームをよく見ると極小さな黒い粒が入っていますよね。じつはこの極小さな粒はこのランの種子なのです。
お菓子を作る方ならご存知でしょうが、バニラの香りをつけるにはバニラビーンズという黒茶色の細長い棒状のものを使用します。
(バニラエッセンスという液状のものも売っていますがこちらは多くの場合、科学的に合成された香料を使用しています。)
このバニラビーンズはバニラ・プラニフォリアの果実を発酵させて作ったものなので中には極小さな黒い種子が沢山入っています。
バニラ・プラニフォリアはつる性のランで原産地はメキシコ周辺ですが、世界中の熱帯地方で広く栽培されています。
香料としてのバニラビーンズの作り方はバニラ・プラニフォリアの成熟前の果実を収穫し熱湯にくぐらせてから、すぐに布でくるんで木箱にいれ密封し2・3日置きます。その後、昼間に箱から出し重ならないように広げ日光に当てて、夜は箱に戻して熟成させます。これを2・3週間繰り返すと香り高いものができるそうです。作り方は他にもいろいろな手法があるようです。

←バニラ(Vanilla planifolia)の草姿です。
  つる性で木を這い登っていきます。
  艶のある明るい緑の葉が美しく、
  観葉植物としても楽しめます。

●まっすぐ書いても傾いて見える!?

台湾と中国南部にはBletilla formosanaというかわいいランが生えています。
このランを日本では「アマナラン」と呼び栽培もされています。
ナント! この「アマナラン」という文字をワープロでたくさん書くと、
文字列はまっすぐ並んでいるはずなのになぜか傾いて見えてしまうんですっ!!
下を見てください!何となく傾いて見えませんか?

アマナラン・アマナラン・アマナラン・アマナラン・アマナラン・アマナラン・アマナラン・アマナラン
アマナラン・アマナラン・アマナラン・アマナラン・アマナラン・アマナラン・アマナラン・アマナラン

ンラナマア・ンラナマア・ンラナマア・ンラナマア・ンラナマア・ンラナマア・ンラナマア
ンラナマア・ンラナマア・ンラナマア・ンラナマア・ンラナマア・ンラナマア・ンラナマア

アマナラン・アマナラン・アマナラン・アマナラン・アマナラン・アマナラン・アマナラン・アマナラン
アマナラン・アマナラン・アマナラン・アマナラン・アマナラン・アマナラン・アマナラン・アマナラン

ンラナマア・ンラナマア・ンラナマア・ンラナマア・ンラナマア・ンラナマア・ンラナマア
ンラナマア・ンラナマア・ンラナマア・ンラナマア・ンラナマア・ンラナマア・ンラナマア

アマナラン・アマナラン・アマナラン・アマナラン・アマナラン・アマナラン・アマナラン・アマナラン
アマナラン・アマナラン・アマナラン・アマナラン・アマナラン・アマナラン・アマナラン・アマナラン

ンラナマア・ンラナマア・ンラナマア・ンラナマア・ンラナマア・ンラナマア・ンラナマア
ンラナマア・ンラナマア・ンラナマア・ンラナマア・ンラナマア・ンラナマア・ンラナマア

アマナラン・アマナラン・アマナラン・アマナラン・アマナラン・アマナラン・アマナラン・アマナラン

アマナラン・アマナラン・アマナラン・アマナラン・アマナラン・アマナラン・アマナラン・アマナラン

タネを明かすと、これは錯視と呼ばれるもので、ワープロのゴシック体で「アマナラン」と書いた場合、「ア」「マ」「ナ」「ラ」の各文字中の横線の位置が順番に低くなっていることから起こる錯覚です。(傾いて見えない人もいますが問題はありませんよ)


「ランを拾いに行ってみましょう」

先にもお話しいたしましたがランには「着生ラン」という木や岩などにくっついて生えるものがあります。そのような「着生ラン」は樹上や岩上といった一般の植物が住むことができないところで生活できるという能力を身につけ自然界での生き残り競争に勝ち抜いてきた植物ですが、地面に生えている植物と異なり常に落下の危険にさらされて生活をしています。
ですから、風・雨・雪などで落ちたり、くっついているところそのものが落下(樹木の老化などによる枝の落下、岩の風化)することによって落ちてしまうことが少なからず起きています。
一度地上に落ちるとたいていは枯死してしまいます。
そんなランたちを拾って育ててみませんか?
 ←木の枝ごと落下していたフウランです。
   シダ植物のノキシノブ
(濃緑色の葉で
   
細長いもの)も一緒にくっついています。

「どんなところに落ちているのか?」というのが気になるところですが、詳しく具体的に「○○県○○村の○○に落ちている」とまではお教えできません(すみません…)が、探すポイントとしては湿度の高いところ・自然度の高い所、たとえば川のそば・滝の近く・社寺などは着生ランが比較的多く見られるところです。そのようなところにある木の下をこまめに見てまわると落ちていることがあります。
(はじめてランを拾ったときは感動ものですね!栗拾いや、潮干狩りをしているような気分でけっこう楽しいです。)
また、社寺などではいつもきれいに清掃してあるので、掃除で集められた枯葉・枯枝などを山積みにしてあるところを見てみるのも一つの方法です。(ただしマナーとして散らかさないこと、管理者に許可を得ることを忘れないでね!)
楽しく、気持ちよく「ラン拾い」に励みましょう!

ちなみに私がこれまで拾ったことがあるランは、「オサラン」「カヤラン」「セッコク」「クモラン」「ムギラン」「ミヤマムギラン」「マメヅタラン」「オオバヨウラクラン」「ヨウラクラン」「ベニカヤラン」「フウラン」「ボウラン」「ムカデラン」「モミラン」「ツリシュスラン」「フガクスズムシ」「ウチョウラン(岩からの落下)」です。
生えているランを採るのは自生量が激減していることを考えると心が痛みますし、このように落ちていずれ枯死するランたちを拾うのはまだ許されるような気がしますので
(落ちて枯死して腐って他の生物の糧になっていく自然のサイクルを小さいながらも断ち切っているとも考えられますが…)、どんどん拾ってあげようと思っています。

拾ったランの処理法ですが、拾ったランは傷んでいたり弱っていることがあるので、そのような時は傷んだ根・葉などを取り除き湿らせたミズゴケで植えつけます。場合によっては湿らせたミズゴケで株全体を軽く覆って2・3日置いたり、傷みがひどく脱水状態になっているようでしたら、砂糖水(極薄く3%くらい)に一晩浸け(翌日水洗後、真水にさらに一晩水に浸ける)療養させる場合もあります。
植えつけてしばらくは湿度が高めのやや明るい日陰に置きます。


最後まで読んでいただきありがとうございます。変な日本語でわかりにくかったことと思いますが、少しでもランに興味を持っていただけたでしょうか?
ランて本当におもしろいですよね?

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